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本記事は、金融機関等のサービスを自社の画面・契約・APIに組み込む際に、誰が勧誘・契約・資金管理を担うかを整理します。自社ポイントや残高を中心とする価値の循環は独自経済圏・決済エコシステムの解説をご覧ください。
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本記事は、金融機関等のサービスを自社の画面・契約・APIに組み込む際に、誰が勧誘・契約・資金管理を担うかを整理します。自社ポイントや残高を中心とする価値の循環は独自経済圏・決済エコシステムの解説をご覧ください。
エンベデッド・ファイナンス(Embedded Finance/組込型金融)とは、金融機関以外の事業者が、自社のウェブサービス、アプリ、EC、SaaS、マーケットプレイスその他のサービスの中に、決済、送金、融資、保険、投資、口座その他の金融機能を組み込むビジネスモデルです。
従来は利用者が金融サービスを利用するために銀行、証券会社、保険会社などへ移動する必要がありましたが、現在では、商品購入、旅行予約、不動産取引、法人向けSaaS、給与管理、EC、モビリティなど、本来は金融とは異なるサービスの利用過程に金融機能そのものを組み込むことが可能となっています。
一方、日本の金融法制では、サービスの名称が「決済」「ウォレット」「後払い」「ポイント」「金融サービス」「紹介」などであっても、その名称だけで規制の有無が決まるわけではありません。
実際に誰が顧客から資金を受け取るのか、誰が契約締結を勧誘するのか、誰が金融商品の条件を説明するのか、誰が送金指図を受けるのか、誰が顧客資産を管理するのかといった実質的な機能によって、必要となる許可・登録・届出が判断されます。
したがって、エンベデッド・ファイナンスを事業化する際には、システム開発や金融機関との契約を進める前の段階から、金融規制上の事業スキームを整理することが重要です。
最初に行うべきなのは、「どのライセンスを取得するか」を決めることではなく、自社が金融取引のどの部分を担うのかを正確に整理することです。
例えば、利用者が自社アプリから送金できるサービスであっても、自社自身が為替取引を行う場合と、銀行や資金移動業者のシステムへの単なるインターフェースを提供する場合とでは規制関係が異なります。
金融商品の紹介についても、単に金融機関の名称やサービスを紹介する場合と、特定の商品を推奨し、顧客の申込みを取得し、契約成立に向けて条件説明や勧誘を行う場合とでは法的評価が異なります。
エンベデッド・ファイナンスでは、「金融サービスを自社ブランドの中に見せること」と「自社自身が規制業務を行うこと」を明確に区別する必要があります。
当事務所では、サービス画面、契約関係、資金フロー、顧客導線、金融機関との役割分担、手数料構造等を確認したうえで、必要となる金融ライセンスの整理から支援します。
利用者から送金の依頼を受け、銀行以外の事業者が資金を移動する仕組みを提供する場合には、資金決済法上の資金移動業に該当する可能性があります。
資金移動業には、取扱金額やサービスの性質に応じて第一種、第二種及び第三種があります。
第二種資金移動業は原則として1件100万円以下の為替取引を対象とし、第三種資金移動業は少額の為替取引を対象とします。100万円を超える高額送金を取り扱う場合には、第一種資金移動業の検討が必要となります。
単純に決済会社や銀行とAPI接続すれば、自社について金融規制を考慮しなくてよいというわけではありません。
誰が利用者から送金依頼を受け、誰が資金移動の義務を負うのかという契約関係と実態を確認する必要があります。
ECモール、予約サイト、プラットフォーム、海外取引サービス等では、事業者が購入者から代金を受領し、後日販売者へ送金する収納代行型のスキームが多く利用されています。
しかし、収納代行という名称を使用していれば当然に資金移動業の対象外になるわけではありません。
特に、国内と国外との間で資金移動を行うクロスボーダー収納代行については、2026年6月1日施行の資金決済法改正を踏まえた確認が重要となっています。
越境EC、海外マーケットプレイス、海外加盟店への精算、海外サービス利用料金の回収などを行う事業者は、従来の収納代行スキームをそのまま継続できるかを改めて確認する必要があります。
契約上の代理受領権だけでなく、実際の資金移動、受取人・支払人との関係、国内外の資金フローなどを含めて判断します。
アプリやECサービスの中にウォレット、プリペイド残高、電子マネー、ポイント等を組み込む場合には、資金決済法上の前払式支払手段に該当しないかを確認する必要があります。
自社又は密接な関係を有する店舗等のみで使用できる仕組みと、広く第三者の加盟店で使用できる仕組みでは規制が異なります。
第三者型前払式支払手段については原則として登録が問題となり、自家型についても発行規模その他の法定要件に応じて届出等が必要となる場合があります。
「ポイント」と表示していても、実質的に利用者が対価を支払って取得し、商品・サービスの購入に使用できる場合には、前払式支払手段該当性の確認が必要です。
非銀行事業者が銀行のために、預金契約、融資契約又は為替取引に関する契約の締結を代理又は媒介する場合には、銀行法上の銀行代理業に該当する可能性があります。
銀行代理業を営むためには、原則として内閣総理大臣の許可が必要です。
例えば、自社サービスの利用過程で特定銀行の口座開設を積極的に勧誘し、申込手続に関与する場合や、銀行融資の契約成立に向けて媒介を行う場合などは、単なる広告・紹介と銀行代理業との境界を確認する必要があります。
「金融機関へ顧客を紹介しているだけ」という認識であっても、説明、推奨、申込みの受付、条件交渉等まで行えば、媒介と評価される可能性があります。
銀行口座と自社アプリをAPI等で接続し、利用者の委託を受けて銀行に対する振込指図の伝達や口座情報の取得・提供等を行う場合には、銀行法上の電子決済等代行業に該当する可能性があります。
国内で電子決済等代行業を営む場合には、原則として登録が必要です。
家計簿アプリ、法人資金管理サービス、会計SaaS、決済アプリ等では、金融機関APIとの接続方法だけでなく、利用者との契約、自社が行う具体的行為、銀行との契約関係まで確認する必要があります。
銀行代理業と電子決済等代行業は別の制度です。
口座開設等の銀行取引契約の締結を代理・媒介する業務と、APIを通じて銀行への指図伝達や口座情報取得等を行う業務を区別して検討する必要があります。
エンベデッド・ファイナンスとの関係で特に重要なのが、金融サービス仲介業です。
金融サービス仲介業は、預金等媒介業務、保険媒介業務、有価証券等仲介業務及び貸金業貸付媒介業務を、1つの登録制度の下で取り扱うことを可能とする仕組みです。
従来型の仲介制度とは異なり、特定の金融機関への所属を必須とせず、複数の金融機関と連携しやすい制度設計となっています。
そのため、例えばEC、SaaS、旅行、不動産、人材、モビリティその他の非金融サービスに、預金、融資、証券、保険など複数分野の金融サービスを組み込みたい事業者にとって有力な選択肢となります。
ただし、金融サービス仲介業ですべての金融商品を取り扱えるわけではありません。
高度に専門的な説明が必要な金融商品等には取扱制限があり、利用者財産の受入れにも制限があります。
したがって、金融サービス仲介業、銀行代理業、金融商品仲介業、保険募集、貸金業その他の制度のうち、どの仕組みが事業モデルに最も適しているかを比較する必要があります。
SaaS、EC、BtoBプラットフォーム等の利用データを利用して融資を提供するEmbedded Lendingでは、誰が貸付主体となるのかが重要です。
自社自身が反復継続して金銭の貸付けを行う場合には、貸金業法上の貸金業登録の検討が必要です。
銀行や貸金業者が融資主体となり、自社は顧客との契約成立を仲介する場合であっても、媒介行為について金融サービス仲介業その他の規制が問題となる場合があります。
一方、単なる広告掲載、金融機関の紹介、一般的な商品情報の提供にとどまる場合には登録を要しないケースもあります。
重要なのは、サービス画面上で利用者に何を表示するかではなく、契約成立までの一連のプロセスに自社がどこまで関与するかです。
Buy Now, Pay Later、分割払い、後払い決済等をサービスへ組み込む場合には、割賦販売法その他の規制を確認する必要があります。
割賦販売法では、包括信用購入あっせん、個別信用購入あっせん等について登録制度が設けられています。
少額の包括信用購入あっせんについても独自の登録制度が存在します。
もっとも、一般に「BNPL」と呼ばれるサービスのすべてが同一の法規制を受けるわけではありません。
利用者の支払時期、分割回数、加盟店との契約関係、立替払の構造、手数料の徴収方法等によって規制関係が変わります。
サービス名称だけで判断せず、契約構造から法令適用を確認する必要があります。
株式、投資信託、ファンド、信託受益権、セキュリティトークンその他の金融商品をサービス内で紹介、勧誘、媒介又は販売する場合には、金融商品取引法上の規制を確認する必要があります。
サービス内容によって、第一種金融商品取引業、第二種金融商品取引業、投資助言・代理業、金融商品仲介業又は金融サービス仲介業などが問題となります。
単なる情報提供と、特定の金融商品の取得を推奨する行為との境界にも注意が必要です。
ユーザー属性や行動データを利用して金融商品をランキング表示したり、アルゴリズムによって特定の商品を優先表示したりする場合には、その設計自体が「勧誘」や「媒介」と評価されないかを検討する必要があります。
旅行予約時の旅行保険、商品の購入時の補償サービス、モビリティサービスに付随する保険などは、エンベデッド・ファイナンスの代表的な分野です。
しかし、利用者に保険商品を推奨し、説明し、契約締結を媒介する場合には、保険募集に関する規制を確認する必要があります。
金融サービス仲介業の保険媒介業務を利用できる場合もありますが、取り扱える保険商品には一定の制限があります。
単なる商品付帯サービスなのか、保険契約の募集なのかを、契約関係及び顧客への説明方法から判断する必要があります。
ステーブルコインその他の電子決済手段や暗号資産を自社サービスへ組み込む場合には、資金決済法上の規制確認が必要です。
電子決済手段の売買・交換・管理等を業として行う場合には電子決済手段等取引業、暗号資産交換サービスを行う場合には暗号資産交換業が問題となります。
さらに、2026年6月1日から「電子決済手段・暗号資産サービス仲介業」の制度が開始されています。
この制度では、一定の範囲で、電子決済手段等取引業者又は暗号資産交換業者の委託を受け、その所属業者のために電子決済手段又は暗号資産の売買・交換の媒介を行うことが可能となっています。
Web3サービス、ウォレット、ゲーム、EC、海外決済等へステーブルコインや暗号資産機能を組み込む場合には、従来の交換業だけでなく、新しい仲介制度を含めて事業スキームを検討する必要があります。
金融機能そのものを銀行、証券会社、保険会社、資金移動業者その他の登録業者へ委託したとしても、自社について当然に金融規制がなくなるわけではありません。
利用者との契約主体、画面上の表示、契約申込みの受付、金融商品の説明、推奨、顧客資金の受領、手数料の受領、APIによる指図伝達等、自社が実際に行う行為を確認する必要があります。
エンベデッド・ファイナンスでは、金融機関を「バックエンド」とし、非金融企業が顧客接点を担うケースが多いため、この役割分担の整理が特に重要となります。
金融機関との業務委託契約だけではなく、顧客から見た実際のサービス提供主体を含めて規制を確認することが重要です。
エンベデッド・ファイナンスでは、法律上の契約書だけではなく、アプリやウェブサイト上の画面設計も重要です。
例えば、単なる金融商品の一覧表示であっても、自社独自の基準で特定商品を上位表示したり、「おすすめ」「あなたに最適」などの表示を行ったりすれば、単なる情報提供を超えて金融商品の勧誘・媒介と評価される可能性があります。
申込ボタンの配置、顧客情報の入力画面、金融機関への情報連携、商品比較ロジック、レコメンドアルゴリズムまで含めた検討が必要になる場合があります。
法令適用の検討は、サービス完成後ではなく、UI・UX及びシステム設計の段階から行う方が、後の大規模な仕様変更を防ぎやすくなります。
規制対象となる金融サービスでは、登録・許可の取得と同時に、継続的な業務管理体制の構築が重要となります。
対象業務によっては、犯罪による収益の移転防止に関する法律に基づく取引時確認、本人確認、疑わしい取引への対応、取引モニタリング等が求められます。
また、制裁対象者確認、反社会的勢力への対応、顧客リスク評価、疑わしい取引の検知、継続的顧客管理等を含めて、事業内容に応じたAML/CFT体制を設計する必要があります。
特にオンライン完結型のエンベデッド・ファイナンスでは、eKYCの仕様と実際の顧客導線を一致させることが重要です。
金融サービスを組み込む場合には、個人情報保護だけでなく、金融情報の管理、アクセス権限、外部委託先管理、サイバーセキュリティ、障害対応等も重要になります。
クラウドサービス、外部API、海外事業者、生成AIその他の第三者サービスを利用する場合には、どの情報を外部へ送信するのか、委託先をどのように監督するのか、障害時にどのように業務を継続するのかを整理する必要があります。
金融当局への登録申請では、単にシステムを導入していることだけではなく、そのシステムを適切に管理・監督できる組織体制が確認される場合があります。
エンベデッド・ファイナンスでは「システム」と「金融コンプライアンス」を別々に設計しないことが重要です。
銀行のために行う行為、API連携、金融商品の仲介は区別して検討します。申請支援は銀行代理業、電子決済等代行業、金融サービス仲介業をご覧ください。
将来的にIPOを予定している企業が金融サービスを組み込む場合には、事業開始時から金融規制を適切に整理しておくことが重要です。
無登録営業の疑義、必要な届出の未提出、利用者資産管理の不備、AML/CFT体制の不足、委託先管理の不備等は、将来のデューデリジェンスや上場審査において問題となる可能性があります。
金融関連事業を新規事業として追加する場合には、売上や成長性だけではなく、許認可、内部統制、リスク管理、業務継続体制まで含めた設計が求められます。
事業拡大後に金融コンプライアンスを後付けするのではなく、事業立上げ時から制度設計へ組み込むことが重要です。
可能ですが、自社が行う具体的な業務によって金融ライセンスが必要になる場合があります。
金融機関と提携していることだけで当然に規制対象外になるわけではありません。顧客との契約関係、勧誘・媒介の有無、資金の受領、APIの利用方法等を確認して判断します。
むしろ開発前の段階で確認することをおすすめします。
金融規制によってサービス仕様、画面設計、契約関係、資金フローを変更する必要が生じることがあるためです。
事業計画、サービス概要図、簡単な資金フロー等の段階から検討できます。
単純な広告や紹介にとどまる場合と、契約締結の勧誘・説明・媒介まで行う場合とでは取扱いが異なります。
「紹介料を受け取っているか」だけでなく、実際にどのような行為を行っているかによって判断されます。
いいえ。
金融サービス仲介業には取扱可能な商品・サービスの範囲が定められており、高度に専門的な説明を必要とする商品等には制限があります。
事業内容によっては、銀行代理業、金融商品仲介業、金融商品取引業、保険募集その他の制度を利用した方が適切な場合があります。
APIを利用するという技術的事実だけで登録の有無は決まりません。
利用者からどのような委託を受け、銀行に対してどのような情報や指図を伝達し、どの情報を取得するのかによって電子決済等代行業該当性を検討します。
すべての後払いサービスが同じ規制になるわけではありません。
支払時期、支払回数、加盟店との関係、立替払の方法その他の契約構造によって規制関係が変わるため、個別のスキーム確認が必要です。
対応可能です。
事業スキームを整理したうえで、事前相談資料の作成、法令上の論点整理、当局からの質問への回答資料作成、登録申請書及び規程類の作成まで一貫して対応します。
対応可能です。
エンベデッド・ファイナンスでは、資金決済法、銀行法、金融商品取引法、貸金業法、保険業法、割賦販売法などが複合的に問題となることが珍しくありません。
サービス全体を確認し、各業法の境界を横断的に整理します。
エンベデッド・ファイナンスの金融規制・許認可についてご相談ください
エンベデッド・ファイナンスでは、「便利なサービスを作れるか」だけではなく、「そのサービスをどの金融規制の下で運営するか」が事業成立の重要な前提になります。
決済、送金、ウォレット、銀行口座、融資、BNPL、投資、保険、ポイント、ステーブルコインなど、金融機能が増えるほど関係する法令も複雑になります。
緒方法務事務所では、金融分野を専門とする行政書士として、事業スキームの法令適用整理、金融ライセンスの選択、金融庁・財務局等への事前相談、登録・許可申請、業務方法書、社内規程・マニュアルの作成まで対応します。
「このサービスに金融ライセンスは必要なのか」「金融機関との役割分担をどう設計すべきか」「どの登録制度を利用するのが最も適切か」という構想段階からご相談いただけます。
金融規制を事業開始後の問題にするのではなく、事業設計の段階から組み込むことで、実装可能で継続可能な金融サービスの構築を支援します。
編集・発信:行政書士 緒方法務事務所
運営責任者:特定行政書士 緒方 隆朗(資格・経歴・事務所概要)
ページ更新日:2026年9月17日