商店街や自治体の「デジタル地域通貨」導入に許可は必要?資金決済法の「第三者型」登録要件と注意点
商店街や自治体の「デジタル地域通貨」導入に許可は必要?資金決済法の「第三者型」登録要件と注意点
商店街や自治体の「デジタル地域通貨」導入に許可は必要?資金決済法の「第三者型」登録要件と注意点
はじめに:地域通貨アプリの導入が進んでいます
近年、地域経済の活性化や観光客のインバウンド対策として、特定の地域や商店街でのみ使用できる「デジタル地域通貨(〇〇ペイ、〇〇コイン)」を導入する自治体や商店街振興組合が増えています。
スマホアプリで決済できる利便性は魅力的ですが、導入にあたって見落とされがちなのが「資金決済法(資金決済に関する法律)」という法律の壁です。
システム開発会社にアプリ制作を依頼する前に、そのスキームが法律上の「銀行業」や「資金移動業」に抵触しないか、また必要な「登録」の手続きが想定されているかを確認する必要があります。
今回は、デジタル地域通貨を導入する際に必ず直面する「第三者型前払式支払手段」の規制について、行政書士が解説します。
1. 「自家型」と「第三者型」の決定的な違い
地域通貨やポイントを発行する場合、法律上は「前払式支払手段」に該当する可能性が高いです。これには大きく分けて2つの種類があり、どちらに該当するかで規制の厳しさが天と地ほど異なります。
① 自家型前払式支払手段
定義: 発行者自身の店舗(または密接な関係がある店舗)のみで使用できるもの。
手続き: 原則として届出のみ(未使用残高が基準額を超えた場合)。
例: 特定のカフェチェーン専用のプリペイドカード。
定義: 発行者以外の店舗(加盟店)でも使用できるもの。
手続き: 財務局への「登録」が必要。
例: 交通系ICカード、百貨店共通商品券、多くのデジタル地域通貨。
地域の複数店舗で使えるデジタル地域通貨は、原則として②の「第三者型」に該当します。この場合、単なる届出ではなく、金融庁(財務局長)の登録審査をクリアしなければ事業を開始できません。
2. 第三者型発行者登録の「3つのハードル」
「第三者型」の登録を受けるためには、消費者保護やマネー・ロンダリング対策の観点から、非常に厳しい要件が課されています。特に商店街組合やベンチャー企業にとってハードルとなるのが以下の点です。
① 純資産要件
発行者の財務基盤として、純資産額が1億円以上あることが求められます。また、直近の決算が赤字でないことなど、経営の健全性が厳しく審査されます。
② 資産保全(発行保証金)
万が一、発行者が破綻した場合でも利用者に返金できるよう、未使用残高(発行額)の50%以上を法務局に供託(または銀行との保全契約)する必要があります。資金繰りへの影響を考慮しなければなりません。
③ 社内体制の整備
システムリスク管理、法令遵守体制、加盟店管理、利用者からの苦情処理体制など、金融機関並みの厳格な社内規定と運用体制の構築が求められます。
3. 規制をクリアするための現実的な選択肢
「純資産1億円もないし、登録は無理だ」と諦める前に、スキーム(仕組み)を工夫することで適法に運用できる場合があります。
有効期限を6ヶ月以内に設定する
有効期限が発行日から6ヶ月以内のものは、資金決済法の適用除外となります。ユーザーの利便性は下がりますが、イベント限定のコインなどでは有効な手段です。
すでに登録済みのプラットフォームを利用する
自社で発行者にならず、すでに第三者型発行者の登録を持っているIT企業のプラットフォーム(OEM提供など)を利用し、発行主体をその企業にする方法です。これなら、自治体や商店街側が登録を受ける必要はありません。
「ポイント」ではなく「電子マネー」としての建付けを見直す
対価を支払って購入するのか、オマケとして付与するのかによっても法の適用が変わります。
4. 専門家にご相談ください
デジタル地域通貨事業は、アプリさえ開発すれば始められるものではありません。サービス開始後に「無登録営業」として摘発されるリスクを避けるためには、開発前の設計段階(スキーム構築)での法的チェックが不可欠です。
当事務所では、金融ビジネスに特化した行政書士として、以下のサポートを行っています。
ビジネススキームの適法性診断(登録が必要かどうかの判定)
第三者型前払式支払手段発行者の登録申請手続き
利用規約や加盟店規約の作成・リーガルチェック
発行保証金(供託金)に関するコンサルティング
「これから地域通貨をやりたいが、法律面が不安だ」という事業者様、自治体担当者様は、まずは一度当事務所までご相談ください。