資金移動業の審査が長期化する理由|財務局が重視する「実効性のあるAML/CFT態勢」とは
資金移動業の審査が長期化する理由|財務局が重視する「実効性のあるAML/CFT態勢」とは
資金移動業の審査が長期化する理由|財務局が重視する「実効性のあるAML/CFT態勢」とは
記事概要
資金移動業登録の審査期間が年々長期化しています。その最大の要因は、金融庁・財務局が求める「マネー・ローンダリング対策(AML/CFT)」の基準が厳格化していることにあります。形式的なマニュアル作成だけでは通らない、審査の実態と「リスクベース・アプローチ」への対応策を行政書士が解説します。
本文
はじめに
近年、資金移動業(送金事業)への参入を目指す企業様から、「事前相談から1年以上経つが、なかなか本申請に進めない」「質問事項(補正指示)が細かすぎて対応しきれない」といった悲鳴に近いご相談が増えています。
かつては書類が整っていれば比較的スムーズに進んだ審査も、現在は「実態審査」のフェーズで非常に高いハードルが課されています。
その背景にあるのが、国際的な要請に基づくマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(AML/CFT)の強化です。今回は、審査現場で今何が起きているのか、登録を勝ち取るためのポイントを解説します。
1. 「雛形マニュアル」では通用しない現実
審査が長期化する最大の理由は、財務局が「書類上の規定(社内規程)」と「実際の運用体制」のギャップを徹底的に突いてくるためです。
インターネットで入手できる一般的な「社内規程の雛形」を社名だけ書き換えて提出しても、現在はまず通りません。
審査官は以下のような視点で質問を投げかけてきます。
「このマニュアルの第◯条にこう書いてありますが、具体的に御社のどの部署の誰が、どのような画面を見て判断するのですか?」
「システムで検知したアラートを、処理するフロー図と人員配置を見せてください」
つまり、「絵に描いた餅」は見抜かれます。自社のシステム仕様や人員規模に即した、具体的かつ泥臭い運用フローが構築されているかが問われているのです。
2. 「リスクベース・アプローチ」の理解が不可欠
現在の審査で最も重視される概念が、犯罪収益移転防止法(犯収法)ガイドライン等が求める「リスクベース・アプローチ」です。
これは、「どの事業者も一律に同じ対策をすれば良い」というものではありません。
どのような顧客層(外国人労働者? 法人? 若年層?)をターゲットにするのか
どのような送金(海外送金? 給与受取? ゲーム内課金?)を扱うのか
自社特有のリスク(=犯罪に利用される可能性)を自ら分析し、「リスクが高い分野には厳重な対策を、低い分野には合理的な対策を」講じることが求められます。
この分析が甘い(=自社のビジネスモデルのリスクを過小評価している)と判断されると、審査はそこでストップします。
3. 「疑わしい取引の届出」の実効性
マネロン対策の要となるのが、不審な動きを察知して当局へ報告する「疑わしい取引の届出」です。
審査では、以下のような「実効性」が厳しくチェックされます。
モニタリングの精度: システムによる自動検知のシナリオ(閾値設定など)は妥当か?
判断プロセス: 検知された取引を、誰が調査し、誰が届出の判断を行うか? 営業部門からの独立性は保たれているか?
「AIが自動で検知します」という説明だけでは不十分です。「AIが検知しなかったが、実は怪しい取引」をどう拾うか、人間によるチェック体制まで含めた説明が必要です。
4. 最重要書類:「特定事業者作成書面(リスク評価書)」
これらの対策の集大成となるのが、申請時に提出する「特定事業者作成書面(リスク評価書)」です。
これは、自社の事業リスクを洗い出し、それに対する低減措置を宣言する書類です。
この書類の内容と、社内規程、そしてシステム仕様書(要件定義書)の3点に矛盾がないことが絶対条件です。多くの審査長期化案件では、ここの整合性が取れていない(書いてあることとシステムができることが違う)ケースが散見されます。
5. まとめ:行政書士は「書類作成代行」ではなく「体制構築パートナー」
資金移動業の登録申請は、もはや単なる「書類作成業務」ではありません。
「ビジネスモデルの設計」「システム要件定義」「コンプライアンス体制の構築」を三位一体で進めるプロジェクトです。
当事務所では、単に申請書を作るだけでなく、以下のような実務支援を行っています。
ビジネスモデルに応じたリスク評価書の作成支援
システムベンダーとの打ち合わせ同席(AML要件の仕様化)
財務局からのヒアリング・質問事項への回答作成サポート
「審査が止まってしまっている」「何から手をつけていいか分からない」「そもそも資金移動業の登録は必要? 」という事業者様は、リカバーが難しくなる前に、専門特化した行政書士へご相談ください。