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海外のVC、海外企業、外国人投資家などから日本企業が出資を受ける場合、会社法上の増資手続だけで完結するとは限りません。
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海外のVC、海外企業、外国人投資家などから日本企業が出資を受ける場合、会社法上の増資手続だけで完結するとは限りません。
外国投資家による日本企業への株式取得等については、外国為替及び外国貿易法、いわゆる「外為法」に基づき、投資実行前の「事前届出」又は投資実行後の「事後報告」が必要となる場合があります。
特に重要なのは、外為法の手続の要否は「海外から送金を受けるかどうか」だけでは決まらないという点です。
外国投資家の属性、投資先企業の業種、取得する株式・議決権の割合、役員就任の有無、投資家による経営関与、投資先が保有する技術、子会社の事業内容、免除制度の利用可能性などを総合的に確認する必要があります。
海外投資家から資金を受け入れる予定がある企業では、投資契約締結や払込日の直前ではなく、資本政策を決定する段階で外為法の確認を行うことが重要です。
外為法の対内直接投資規制は、単純に「外資企業か、日本企業か」だけで判断する制度ではありません。
実務では、次の順序で検討することが重要です。
最初に確認するのは、投資を行う者が外為法上の「外国投資家」に該当するかどうかです。
外国に居住する個人、外国法令に基づいて設立された法人その他の団体などは典型的な外国投資家です。
しかし、外国投資家に該当するのは海外法人だけではありません。
日本国内で設立された法人であっても、非居住者や外国法人等が議決権の一定割合以上を保有している場合や、非居住者が役員構成の過半数を占める場合などには、外為法上の外国投資家として取り扱われる場合があります。
そのため、「投資者は日本法人だから外為法は関係ない」と判断することはできません。
投資者の直接の株主だけでなく、最終親会社、実質的な支配関係、役員構成などまで確認することが必要になる場合があります。
次に、予定している投資・取引が外為法上の「対内直接投資等」に該当するかを確認します。
代表的なのが、日本企業の株式・持分の取得です。
上場会社については一定割合以上の株式又は議決権の取得が対象となり、現在の制度では1%が重要な基準となります。
一方、非上場会社については、取得割合が小さい場合であっても、株式・持分の取得自体が対内直接投資等の対象となり得ます。
ただし、非上場会社の株式を1株取得したという理由だけで、必ず事前届出又は事後報告が必要になるという意味ではありません。
外国投資家の国籍・所在国、投資先企業の事業内容、取得後の出資比率・議決権比率、報告不要規定、事前届出免除制度等まで確認して最終的な手続義務を判定します。
事前届出の要否を左右する最も重要な判断の一つが、投資先企業の業種判定です。
外為法では、国の安全、公の秩序、公衆の安全、我が国経済の円滑な運営等の観点から、一定の業種を「指定業種」としています。
さらに、指定業種の中でも安全保障上特に重要性が高い分野は、一般に「コア業種」と呼ばれています。
指定業種やコア業種に該当する場合には、原則として事前届出を検討する必要があり、免除制度を利用できる範囲も限定されます。
指定業種に該当したからといって、すべての外国投資家について必ず事前届出が必要になるわけではありません。
外国投資家の属性や取得割合等に応じて、一定の免除基準を遵守することを条件として、事前届出が免除される制度があります。
ただし、免除制度は単純な「届出不要制度」ではありません。
免除制度を利用した外国投資家には、役員就任、重要な経営事項への関与、非公開技術情報へのアクセス等について一定の制約が課されます。
投資実行時だけ免除基準を満たせばよいのではなく、投資後も基準を遵守する必要がある点が重要です。
最後に、実際に必要となる届出・報告の種類、提出期限、提出先を確定します。
外為法には、対内直接投資等の事前届出・事後報告だけでなく、資本取引に関する報告、支払又は支払の受領に関する報告など、複数の手続があります。
したがって、対内直接投資の事後報告を提出したからといって、外為法上必要な手続がすべて完了するとは限りません。
最も典型的な対内直接投資等が、日本企業の株式又は持分の取得です。
新株発行による増資だけでなく、既存株主から株式を取得するM&Aや株式譲渡も対象となります。
上場会社については株式・議決権の1%という基準が重要になります。
非上場会社については、少数株式の取得であっても対内直接投資等に該当し得るため、「取得割合が小さいから外為法は関係ない」と判断することは危険です。
非上場会社の株式又は持分を、別の外国投資家から外国投資家が取得する場合には、「特定取得」に該当することがあります。
新株発行による増資とは異なる制度区分となるため、売主・買主双方の属性、対象会社の業種等を確認する必要があります。
クロスボーダーM&Aでは、この特定取得の検討を忘れないことが重要です。
外為法の規制対象は、株式を購入する行為だけではありません。
一定の場合には、外国投資家又はその密接関係者を日本企業の取締役、監査役その他の役員に就任させる議案について、外国投資家が同意する行為も対内直接投資等となります。
既に出資済みの外国株主から役員を派遣する場合でも、改めて外為法上の手続が必要になる可能性があります。
日本企業の事業目的を変更し、新たに指定業種に属する事業を追加する場合にも注意が必要です。
外国投資家が一定の条件の下で事業目的変更の議案に同意する行為について、外為法上の対内直接投資等として事前届出が問題となることがあります。
投資を行った時点だけでなく、その後の定款変更にも外為法の検討が必要となる場合があります。
株式出資を伴わないデットファイナンスでも、対内直接投資等になる場合があります。
外国投資家から日本企業に対する一定の長期貸付や、一定の条件を満たす社債の取得については、金額、期間、外国投資家及びその密接関係者による貸付・社債保有残高、日本企業の負債額との関係などによって対内直接投資等に該当することがあります。
したがって、海外親会社から日本子会社への長期ローンや、海外ファンドによる社債引受けについても外為法確認が必要です。
外国企業が日本国内に支店その他の事業拠点を設置する場合や、日本企業から事業を承継する場合なども規制対象となることがあります。
株式取得を伴わない日本進出や企業再編であっても、外為法の確認を省略することはできません。
指定業種とは、国の安全、公の秩序、公衆の安全等を確保する観点から、外国投資家による投資について事前審査の対象とされている業種です。
対象となる分野は非常に広く、武器、航空機、宇宙、原子力などの典型的な安全保障関連分野だけではありません。
情報通信、サイバーセキュリティ、電力、ガス、通信、水道、鉄道、石油、放送、警備、農林水産その他の分野も対象となる場合があります。
コア業種は、指定業種のうち、国の安全等を損なうおそれが特に大きいとして、免除制度がより厳格に制限されている分野です。
武器、航空機・無人航空機、原子力、宇宙、軍事転用可能な汎用品、サイバーセキュリティ関連の一部、重要インフラの一部などが含まれます。
さらに、経済安全保障政策の強化に伴い、重要鉱物、永久磁石、工作機械・産業用ロボット、半導体製造関連、先端電子部品、蓄電池、船舶用機関、金属3Dプリンター、光ファイバケーブル等、サプライチェーン上重要な分野も規制対象として拡大されています。
IT企業については、特に慎重な判定が必要です。
しかし、「ソフトウェアを開発している」「クラウドを利用している」「暗号通信を使っている」という理由だけで、直ちにコア業種になるわけではありません。
実際には、提供するサービスの内容、プログラムの機能、対象となる顧客・インフラ、保有する技術、サイバーセキュリティとの関係、関連する告示上の業種区分等を具体的に確認する必要があります。
外為法の業種判定では、会社の名称や「IT企業」という大まかな分類ではなく、実際にどのような事業・技術を扱っているのかを確認することが重要です。
業種判定は、定款の事業目的だけを機械的に確認すれば終わるものではありません。
実際に行っている事業、将来開始することが具体的に決定している事業、製品・サービスの内容、保有技術、子会社等の事業なども確認する必要があります。
特に、複数の子会社を持つ企業や、事業内容の変化が速いスタートアップでは、過去の定款だけを見て判定すると誤る可能性があります。
一定の外国金融機関については、指定業種に対する投資について比較的広い範囲で事前届出免除制度を利用できる仕組みがあります。
もっとも、外国金融機関に該当するかどうか自体にも要件があり、単に金融関連企業であるというだけでは足りません。
一般の海外VC、海外事業会社、個人投資家等については、投資先がコア業種か、それ以外の指定業種かによって免除可能性が変わります。
コア業種以外の指定業種では一定の免除基準を満たすことにより免除を利用できる場合があります。
コア業種についてはより厳格であり、一般投資家については取得割合が10%未満であることや、追加的な免除基準の遵守などが問題となります。
取得割合が10%以上となるコア業種への投資については、一般投資家が免除制度を利用できない場合があります。
一般的な免除基準では、外国投資家による経営への積極的な関与や、非公開の技術情報へのアクセスなどが重要な判断要素になります。
外国投資家本人や一定の関係者を役員として就任させないこと、事業の譲渡・廃止等に関する一定の議案を自ら提案しないこと、一定の非公開技術情報へアクセスしないことなどが典型的な基準です。
コア業種については、さらに追加の基準があります。
VC投資では、社外取締役指名権、情報提供権、オブザーバー権、技術DD、定期的な経営報告などが投資契約に含まれることがあるため、投資契約の内容と免除基準を整合させることが重要です。
2025年5月には、外国政府等との関係から安全保障上のリスクが高い一定の外国投資家について、事前届出免除制度を制限する制度改正が施行されています。
外国政府等との契約又は外国法令等に基づき情報収集活動に協力する義務を負う一定の者や、それらの者等に一定程度支配されている法人その他の団体などは「特定外国投資家」として取り扱われる場合があります。
特定外国投資家については、外国政府・一定の国有企業等と同様に、指定業種への投資について事前届出免除制度を利用できない場合があります。
さらに、形式的には特定外国投資家に該当しなくても、安全保障上これに準ずる一定の投資家について免除制度が制限される仕組みも設けられています。
したがって、現在の外為法実務では、単に投資者の所在地や国籍を見るだけでは不十分であり、外国政府等との関係や最終的な支配構造まで確認しなければならない場合があります。
事前届出が必要となる場合、投資を先に実行して後から届け出ることはできません。
事前届出が受理された場合、原則として受理日から30日間、対象となる投資・行為を実行できない「禁止期間」が設定されます。
もっとも、安全保障上の問題がないと判断される案件については、この禁止期間が短縮されることがあります。
一方、審査を継続する必要がある案件については、法令上、禁止期間が延長される場合があります。
資金調達やM&Aのクロージング日を先に確定してしまうと、外為法の審査が間に合わず、払込日や株式譲渡日を変更しなければならなくなる可能性があります。
そのため、外為法確認は投資スケジュール策定の初期段階で行う必要があります。
事前届出の対象とならない投資であっても、事後報告が必要となることがあります。
対内直接投資等の株式取得その他の取引については、取引の種類に応じて、取引実行後一定期間内に日本銀行を経由して財務大臣及び事業所管大臣に報告する必要があります。
株式取得等について45日以内の報告となる類型がありますが、すべての手続が一律45日というわけではありません。
取引類型によって期限、様式、報告事項が異なるため、「外為法は45日以内」とだけ覚えて処理することは避けるべきです。
対内直接投資等の届出・報告と、海外との資金決済に関する「支払又は支払の受領に関する報告書」は別の制度です。
原則として、一定の居住者・非居住者間の支払又は支払の受領について、3,000万円相当額を超える場合には、支払等報告が必要となることがあります。
したがって、外国投資家による増資について、対内直接投資等の事後報告を行ったからといって、それだけで支払等に関する外為法上の報告義務まで処理されたことにはなりません。
「投資そのものに関する報告」と「資金の受払いに関する報告」を分けて確認することが重要です。
2026年6月5日、対内直接投資審査制度をさらに高度化する改正外為法が公布されました。
この改正では、海外法人等を介して日本企業を間接的に取得する取引への対応、一定の高リスクな非居住者等の支配・影響下で行われる国内投資への対応、投資に伴うリスク軽減措置の明確化などが盛り込まれています。
また、指定業種以外への投資であっても、安全保障上のリスクが高まった場合に対応するための制度も整備されます。
2026年9月現在、改正法の主要部分は公布の日から1年以内の政令で定める日から施行される仕組みとなっており、関連する政省令・告示の整備も進められています。
そのため、今後予定される投資については、現在の制度だけでなく、改正法の施行時期と経過措置まで確認してスケジュールを組む必要があります。
外為法違反は、単なる書類の提出遅れとして扱われるとは限りません。
事前届出義務違反については刑事罰の対象となる可能性があるほか、財務大臣及び事業所管大臣による株式売却その他の措置命令の対象となる場合があります。
また、事前届出免除制度を利用したにもかかわらず免除基準を遵守していない場合にも、勧告、命令その他の措置の対象となる可能性があります。
財務省は、対内直接投資等の事前届出義務、事後報告義務、免除基準の遵守状況についてモニタリングを行っています。
M&A、資金調達、IPOのデューデリジェンスにおいて過去の外為法対応が問題となることもあるため、届出・報告漏れに気付いた場合には放置せず、速やかに事実関係を整理することが重要です。
既に投資を実行した後で届出・報告漏れが判明した場合でも、まず必要なのは正確な事実関係の把握です。
投資年月日、投資者の属性、取得株式数、取得後の議決権比率、対象会社の当時の事業内容、指定業種への該当性、当時利用可能であった免除制度、役員派遣・技術情報アクセスの有無などを整理します。
その上で、どの届出・報告が必要であったのかを判定し、日本銀行、財務省又は事業所管省庁への対応を検討します。
過去案件については、現在の法令ではなく、投資を実行した当時の法令・告示を基準として検証することが重要です。
投資者の直接の法人形態だけではなく、資本関係、議決権、役員構成、最終親会社その他の支配関係を確認し、外為法上の外国投資家該当性を整理します。
定款、登記事項、会社案内だけでなく、実際の事業内容、製品・サービス、技術、子会社等の事業を確認し、指定業種・コア業種への該当性を検討します。
特にIT、FinTech、サイバーセキュリティ、半導体、蓄電池、インフラその他の経済安全保障関連分野では、事業内容を具体的に確認したうえで判断します。
投資家の属性、投資割合、投資先の業種、役員派遣、経営関与、技術情報へのアクセス等を確認し、事前届出免除制度を利用できるかを検討します。
投資契約、株主間契約その他の資料についても、外為法手続の判定に必要な範囲で確認します。
案件に応じた外為法上の届出書・報告書を作成し、日本銀行を経由する行政手続に対応します。
形式的な様式作成だけではなく、投資スキーム、業種、外国投資家の属性等と記載内容の整合性を確認した上で手続を進めます。
事前届出後に追加説明や資料提出を求められた場合についても、照会内容を整理し、必要な回答書・説明資料の作成を支援します。
複数の省庁が関係する案件についても、手続全体を整理して対応します。
投資禁止期間、審査期間、届出準備期間を踏まえ、払込日、株式譲渡日、クロージング日等から逆算して手続スケジュールを設計します。
海外投資家との資金調達やM&Aでは、契約締結後ではなく、可能な限り初期段階から外為法確認を行うことを推奨しています。
過去の増資、株式譲渡、役員派遣等について外為法対応が行われていなかった場合には、当時の法令を基準として手続義務を再検証します。
必要な場合には、事実関係整理、提出書類の作成、行政機関への説明等の是正対応を支援します。
必ず必要になるわけではありません。
投資者が外国投資家に該当するか、対象会社が指定業種・コア業種に該当するか、取得割合、外国投資家の属性、事前届出免除制度を利用できるかなどによって結論が変わります。
対内直接投資等の定義上、対象となり得ます。
もっとも、1株取得したという事実だけで必ず事前届出・事後報告が必要になるわけではありません。
外国投資家の国籍・所在国、業種、取得後の比率、免除制度や報告不要規定等を含めて判断します。
日本法人であっても外国投資家に該当する場合があります。
外国法人等による議決権保有状況や役員構成などによっては、国内法人が外為法上の外国投資家として扱われる可能性があります。
SaaS事業を行っているという理由だけで直ちにコア業種になるわけではありません。
提供するサービス、対象顧客、システム・技術の内容、サイバーセキュリティとの関係その他の具体的事情を確認して判定する必要があります。
一定の場合には関係します。
外国投資家又はその密接関係者を役員に選任する議案への同意が対内直接投資等に該当し、事前届出が必要となる場合があります。
関係する場合があります。
貸付期間、金額、貸付残高、密接関係者による貸付・社債保有状況、日本法人の負債額等の条件によって、対内直接投資等又はその他の資本取引に関する手続が必要となる場合があります。
既に海外から出資を受けてしまいました。後から対応できますか?
まず、当時の法令を基準として、本当に事前届出又は事後報告義務があったのかを確認する必要があります。
義務があったことが判明した場合には、放置せず、事実関係を整理したうえで必要な是正対応を検討します。
必ずしも完了しません。
投資自体に関する事前届出・事後報告と、支払又は支払の受領に関する報告は別の制度です。
案件によっては双方の報告が必要となります。
外国投資家から出資を受ける前にご相談ください
外為法の最大の難しさは、届出書を書くことではなく、「そもそも何の手続が必要なのか」を正確に判定することにあります。
外国投資家該当性、対内直接投資等・特定取得の区分、指定業種・コア業種、免除制度、投資割合、経営関与、技術情報、支払等報告まで、一つでも判定を誤ると手続全体が変わります。
特に、海外VC・海外事業会社からの資金調達、クロスボーダーM&A、外国親会社からの長期融資、外国株主による役員派遣、FinTech・IT・サイバーセキュリティ・半導体・蓄電池・インフラ関連企業への投資については、早期の確認をお勧めします。
緒方法務事務所では、金融・投資規制に関する行政手続を専門分野として、外為法上の届出要否判定から、事前届出・事後報告、行政機関への照会対応、過去案件の是正まで一貫して対応します。
投資契約締結前、増資払込前、M&Aのクロージング前の段階からご相談ください。
対内直接投資等の事前届出|外為法・外国投資規制に強い金融専門行政書士
編集・発信:行政書士 緒方法務事務所
運営責任者:特定行政書士 緒方 隆朗(資格・経歴・事務所概要)
ページ更新日:2026年9月15日