【Webサービス・アプリ運営者向け】その「投げ銭」や「ゲーム内コイン」は資金決済法の対象?スタートアップが陥る発行届出の落とし穴
【Webサービス・アプリ運営者向け】その「投げ銭」や「ゲーム内コイン」は資金決済法の対象?スタートアップが陥る発行届出の落とし穴
【Webサービス・アプリ運営者向け】その「投げ銭」や「ゲーム内コイン」は資金決済法の対象?スタートアップが陥る発行届出の落とし穴
記事概要
ライブ配信の「投げ銭」やゲームの「課金アイテム」は、資金決済法の規制対象となる可能性があります。有償・無償発行の区分管理や、サービス終了時の払戻し義務など、スタートアップが見落としがちな「自家型前払式支払手段」のリスクと対策を行政書士が解説します。
本文
Web3.0やクリエイターエコノミーの盛り上がりにより、独自トークン、ゲーム内通貨、ライブ配信の投げ銭(ギフティング)機能を実装したサービスが次々と生まれています。
開発スピードが求められるスタートアップにおいて、決済機能の実装はStripeやアプリ内課金(IAP)を使えば技術的には容易です。しかし、「法的なスキーム」の構築は追いついていますか?
特に注意が必要なのが、資金決済法の「前払式支払手段」の規制です。
ここを疎かにすると、サービスが軌道に乗ったタイミングで金融庁(財務局)から指摘を受けたり、最悪の場合、IPO(新規上場)やM&A、VCからの資金調達時のデューデリジェンス(企業調査)で「重大なコンプライアンス違反」として破談になるリスクがあります。
今回は、Webサービスやアプリ運営者が知っておくべき、資金決済法のポイントと実務上の対策を解説します。
1. 「コイン」や「ポイント」がお金とみなされる時
ユーザーが事前にお金を支払い、対価として発行されるポイントやコイン、アイテムなどを、法律では「前払式支払手段」と呼びます。
Webサービスやアプリでよくある以下の仕組みは、原則として規制の対象になります。
ゲーム内通貨(ジェム、コイン、石など)
投げ銭用ポイント(購入して、配信者にアイテムとして贈るもの)
サブスク型サービスの繰越可能ポイント
これらを自社サービス内だけで使える場合は「自家型前払式支払手段」に該当します。
2. システム設計で必須の「有償」と「無償」の区分管理
ここが開発者にとって最も重要なポイントです。
資金決済法の規制対象となるのは、ユーザーがお金を払って購入した「有償発行分」のみです。
ログインボーナスやクエスト報酬などで付与される「無償発行分」は対象外です。
しかし、データベースや管理画面上で、この「有償分」と「無償分」が明確に区別されておらず、「ユーザーの総保有コイン数」として混ざって管理されている場合はどうなるでしょうか?
この場合、実務上は「全額が有償発行分(=供託対象)」とみなされるリスクが極めて高くなります。
こうなると、本来不要なはずの莫大な供託金を積むことになり、キャッシュフローを圧迫します。
【対策】
サービス設計(DB設計)の段階で、必ず「有償残高」と「無償残高」を別カラムで管理し、消費ロジック(例:有償分から先に消費するのか、無償分からか)を規約で明確にしておく必要があります。
3. 「1,000万円の壁」と供託義務
毎年3月末・9月末の基準日において、「有償分の未使用残高」が1,000万円を超えた場合、管轄の財務局への届出と、残高の半額(50%)以上の発行保証金の供託が義務付けられます。
ヒットするアプリやゲームは、短期間でこの1,000万円のラインを突破します。
「まだベータ版だから」と油断していると、気づいた時には供託義務違反(6月以下の懲役または50万円以下の罰金)の状態に陥っていることも珍しくありません。
4. サービス終了(サ終)時の「払戻し義務」
最近、消費者保護の観点から特に厳しく見られているのが、サービス終了時の対応です。
資金決済法では、サービスを廃止する場合、未使用残高をユーザーへ現金で払い戻すことを義務付けています。
最近のニュースでも、突然のサービス終了に伴い、資金不足で返金対応ができず、大きなトラブルになる事例が散見されます。発行保証金の供託制度は、こうした万が一の事態にユーザーを守るためのセーフティネットでもあります。
5. スタートアップが見落とす「資金調達」への影響
ベンチャーキャピタル(VC)や提携先企業は、出資検討時に必ず法務デューデリジェンスを行います。
その際、アプリ内に課金機能があるにも関わらず、資金決済法の届出がなされていなかったり、有償・無償の管理が杜撰だったりすると、「ガバナンス欠如」「潜在的債務リスク」と判断され、出資が見送られるケースがあります。
「知らなかった」では済まされないのが金融規制の世界です。
まとめ:ローンチ前の規約チェック・スキーム相談を
Webサービスやアプリの課金モデルは複雑化しており、「このスキームなら法律の適用除外になる(例:有効期限6ヶ月以内の設定など)」といった判断には専門的な知識が必要です。
当事務所では、以下のようなサポートを行っております。
ビジネスモデルが資金決済法に該当するかの判定
利用規約(特にコイン・ポイントに関する条項)の作成・レビュー
財務局への届出書類作成、供託手続きのサポート
貴社のサービスが健全に成長できるよう、法務面からバックアップいたします。ローンチ前、あるいは課金実装前の段階で、ぜひ一度ご相談ください。