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本記事では、海外投資家の属性・出資構成と、国内ファンドの募集・運用の分担を中心に整理します。海外運用会社が日本へ拠点を設ける手順は海外運用会社の日本参入ロードマップをご覧ください。
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本記事では、海外投資家の属性・出資構成と、国内ファンドの募集・運用の分担を中心に整理します。海外運用会社が日本へ拠点を設ける手順は海外運用会社の日本参入ロードマップをご覧ください。
日本では「資産運用立国」の実現に向け、国内外の資金を成長分野へ供給するとともに、資産運用業への新規参入を促進する政策が進められています。
海外の機関投資家、ファミリーオフィス、事業会社その他の投資家から資金を受け入れ、日本国内で不動産、再生可能エネルギー、スタートアップ、PE・VCその他の事業や金融資産へ投資するファンドを組成することは、今後さらに重要な資金調達手法の一つになると考えられます。
一方、海外投資家から資金を受け入れるというだけで、日本の金融商品取引法上の規制がなくなるわけではありません。
むしろ、ファンドの法的構成、出資持分の勧誘方法、投資対象、運用方法、投資家属性によって、第二種金融商品取引業、投資運用業、適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務その他の制度を正確に選択する必要があります。
緒方法務事務所では、金融商品取引業その他の金融行政手続を専門分野として、海外投資家を含むファンドビジネスについて、事業スキームの確認から登録・届出、社内規程、コンプライアンス態勢の構築まで支援しています。
政府の資産運用政策は、単に家計の「貯蓄から投資へ」を進める政策にとどまらなくなっています。
日本国内の資産運用会社の競争力向上、新規参入の促進、海外資産運用会社の日本参入、アセットオーナー改革、オルタナティブ投資の拡大、成長企業への資金供給などを含む、金融市場全体の構造改革として進められています。
2023年に策定された「資産運用立国実現プラン」に続き、2026年には「成長投資を促進するための金融戦略―資産運用立国のアップグレード―」が策定され、資産運用分野は日本の成長産業の一つとして、さらに重要性を増しています。
また、北海道・札幌、東京、大阪、福岡を中心とした金融・資産運用特区の取組や、海外金融事業者の日本参入支援なども進められています。
したがって、海外投資家から日本のファンドや事業へ資金を呼び込む環境は整備されつつありますが、それと同時に、金融規制に適合したスキーム設計がこれまで以上に重要になっています。
「投資家が海外にいるから日本の金融商品取引法は関係ない」という考え方は危険です。
日本法人や日本国内の事業者がファンドを組成し、投資家に出資持分を取得させる場合、その出資持分が金融商品取引法上の集団投資スキーム持分などの「有価証券」に該当する可能性があります。
例えば、合同会社と匿名組合契約を組み合わせたGK-TKスキーム、投資事業有限責任組合、任意組合その他の組合型ファンドについては、出資持分の募集・私募や運用方法に応じて金融商品取引法上の手続が問題となります。
重要なのは、ファンドを作ること、投資家を勧誘すること、集めた資金を運用することは、それぞれ別の法的行為として検討しなければならないという点です。
ファンドの許認可を検討する際には、法人形態から考えるのではなく、まず業務を機能ごとに分解することが重要です。
誰がファンドを組成するのか。
誰が投資家に対して勧誘を行うのか。
誰が出資契約を締結するのか。
誰がファンド財産を運用するのか。
何に投資するのか。
投資判断を誰が行うのか。
投資家は日本居住者なのか、非居住者なのか。
投資家は適格機関投資家、特定投資家、外国法人、富裕層その他どの属性に該当するのか。
これらによって必要となる金融商品取引業の種類や、利用できる特例制度が変わります。
「二種金商が必要か」という一点だけを見るのではなく、募集・私募と運用を分けて判断することが、ファンド規制の基本です。
ファンド持分など、金融商品取引法上のいわゆる第二項有価証券について募集・私募やその取扱いを業として行う場合、原則として第二種金融商品取引業の登録が問題となります。
例えば、GK-TKの匿名組合出資持分、LPSその他の組合型ファンド持分を投資家に取得させる行為は、典型的な検討対象です。
自ら組成したファンドについて投資家を募集する場合だけでなく、他社が組成したファンドの取得勧誘を行う場合にも、業務内容に応じて第二種金融商品取引業の登録が必要となる可能性があります。
第二種金融商品取引業者として登録するためには、単に申請書を提出すればよいわけではありません。
経営体制、人的構成、コンプライアンス態勢、内部管理態勢、顧客管理、広告審査、利益相反管理、外部委託管理、情報管理、AML/CFT態勢その他の実効的な業務運営体制を整備する必要があります。
そのため、ファンドビジネスを継続的に拡大する場合には、事業開始後ではなく、事業設計の段階から登録要件を意識することが重要です。
海外投資家向けファンドで特に注意しなければならないのが、第二種金融商品取引業と投資運用業の区別です。
第二種金融商品取引業は、主としてファンド持分などの募集、私募、売買その他の取扱いに関する登録です。
一方、投資家から出資を受けた財産について、投資判断に基づいて主として有価証券やデリバティブ取引へ投資して運用する場合には、原則として投資運用業の登録が問題となります。
したがって、例えば有価証券等を投資対象とするファンドについて、事業者が自ら投資家を勧誘し、さらに自らファンド財産を運用するのであれば、第二種金融商品取引業と投資運用業の双方を検討しなければならない場合があります。
逆に、実物不動産や事業そのものへの投資など、有価証券・デリバティブへの投資運用に該当しないスキームについては、投資運用業とは別の整理になる場合があります。
ただし、その場合でも、不動産特定共同事業法その他の業法が適用される可能性があります。
投資対象が違えば必要となる許認可も変わるため、「ファンド」という名称だけで必要なライセンスを判断することはできません。
すべてのファンドについて第二種金融商品取引業や投資運用業の登録が必要になるわけではありません。
一定の要件を満たす場合には、金融商品取引法第63条に基づく「適格機関投資家等特例業務」を利用できる可能性があります。
典型的には、適格機関投資家が少なくとも1名参加し、それ以外の出資者についても法令上認められた一定の投資家の範囲及び人数制限を満たす場合などに利用が検討されます。
ここで特に注意しなければならないのは、「適格機関投資家が1人いれば、誰でも49人まで勧誘できる制度」ではないという点です。
適格機関投資家以外の出資者についても法令上の要件があり、ファンドの構成、投資家属性、関係者との関係等を個別に確認する必要があります。
また、適格機関投資家等特例業務は「届出だから簡単」という制度でもありません。
届出後も一定の行為規制、帳簿書類の作成・保存、事業報告その他の義務が課され、監督当局による報告徴求や行政処分の対象にもなります。
届出制度であっても、金融規制の外に出るわけではありません。
海外投資家向けファンドを検討する場合、適格機関投資家等特例業務だけでなく、「海外投資家等特例業務」を検討することが重要です。
海外投資家等特例業務は、日本を国際金融センターとして発展させる政策の一環として設けられた制度です。
一定の要件を満たす組合型ファンドについて、主として外国法人や一定の要件を満たす外国居住者などの「海外投資家等」から出資を受け、その資金を運用する場合、事前に所定の届出を行うことによって、一定範囲の投資運用業及び第二種金融商品取引業について登録を受けずに業務を行える可能性があります。
制度上は、非居住者からの出資割合、投資家属性、業務を行う拠点その他について具体的な要件があります。
そのため、
投資家の所在だけでなく、出資構成と制度上の要件を確認します。
ファンドの出資構成や投資家属性を事前に確認し、制度要件を満たすよう設計することが必要です。
海外投資家からの資金調達を中心とするファンドでは、通常の63条特例だけでなく、この海外投資家等特例業務まで含めて比較検討することが重要です。
初期コストだけを比較して、届出制度を選択することが必ずしも最適とは限りません。
限定された投資家のみを対象とする小規模ファンドであれば、適格機関投資家等特例業務や海外投資家等特例業務が合理的な場合があります。
一方、複数のファンドを継続的に組成する、
投資家層を拡大する、
国内外の機関投資家へ本格的にアプローチする、
第三者ファンドの取扱いも行う、
資産運用会社として事業を成長させる、
といった計画がある場合には、第二種金融商品取引業や投資運用業の登録を取得した方が、長期的な事業展開に適する場合があります。
重要なのは「最も簡単な制度」を選ぶことではなく、予定している事業を継続的かつ適法に運営できる制度を選ぶことです。
近年は、投資運用業への新規参入を促進するための制度整備も進められています。
その一つが「投資運用関係業務受託業」の制度です。
一定の計理業務や法令等遵守に関する業務を、登録を受けた投資運用関係業務受託業者へ委託することにより、投資運用業者側の人的構成要件について一定の緩和を受けられる場合があります。
従来は、資産運用会社を設立するために必要となる内部管理人材の確保が新規参入の大きなハードルとなっていました。
制度改正により外部委託を活用できる余地が広がったことは、独立系資産運用会社、海外資産運用会社、新規ファンドマネージャーにとって重要な変化です。
もっとも、外部委託を行えば自社の責任がなくなるわけではありません。
委託先の選定、監督、情報管理、業務継続その他の管理態勢を含め、実効的なガバナンスを構築する必要があります。
海外投資家から資金を受け入れるファンドでは、投資家属性の確認とAML/CFT対応が極めて重要になります。
単にパスポートや法人登記書類を取得するだけでは十分ではありません。
法人投資家であれば、法人そのものだけでなく、実質的支配者、所有構造、資金源、投資目的、事業内容、所在国などを確認する必要があります。
複雑な持株会社や信託、ファンド、SPVを経由して出資するケースでは、最終的な実質的支配関係まで確認する必要が生じます。
また、本人確認書類の真正性、
実質的支配者の確認、
制裁対象者との関係、
高リスク国・地域との関係、
PEPsへの該当性、
資金源・財産源、
取引目的、
異常な取引のモニタリング、
疑わしい取引への対応、
記録保存、
継続的顧客管理、
といった事項を、リスクに応じて管理できる体制が必要です。
金融商品取引業の登録では、規程を作成しているかだけではなく、その規程を実際に運用できる人的構成と業務フローがあるかが重要になります。
海外投資家との取引では、金融商品取引法だけで手続が完結するとは限りません。
取引内容によっては、外国為替及び外国貿易法に基づく届出・報告、経済制裁への対応、外国投資規制その他の確認が必要となる場合があります。
また、日本から海外投資家へファンドを勧誘する場合には、投資家が所在する国・地域の証券規制や私募規制が別途適用される可能性があります。
日本国内で第二種金融商品取引業の登録を取得しているからといって、当然に世界各国で投資勧誘ができるわけではありません。
日本法上の許認可と、投資家所在国の金融規制は分けて検討する必要があります。
実務上よくある問題が、「まずGK-TKやLPSを作ってから許認可を考える」という進め方です。
しかし、金融規制上は逆の順序で検討した方が安全です。
まず、誰から資金を集めるのか、
何人程度の投資家を予定しているのか、
国内投資家と海外投資家の割合はどうなるのか、
何に投資するのか、
誰が募集を行うのか、
誰が運用するのか、
単発ファンドなのか継続的な事業なのか、
将来的に投資家層を拡大するのか、を決めます。
その上で、適格機関投資家等特例業務、海外投資家等特例業務、第二種金融商品取引業、投資運用業その他の制度を比較し、最も適切なスキームを設計します。
許認可から逆算してファンドを設計することが、後からスキームを作り直すリスクを減らします。
第二種金融商品取引業の登録では、申請書類だけでなく、実際に業務を適正に遂行できる組織が構築されているかが確認されます。
特に重要なのが、役員及び主要担当者の金融実務経験です。
代表者、営業責任者、コンプライアンス責任者、内部管理担当者などについて、担当する業務を適切に遂行できる知識・経験を有していることを説明する必要があります。
また、事業内容に応じて、
コンプライアンス規程、
業務方法書、
顧客管理規程、
勧誘・広告管理規程、
AML/CFT関連規程、
利益相反管理規程、
情報管理規程、
個人情報管理規程、
外部委託管理規程、
苦情・紛争処理規程、
内部監査関連規程、
その他必要な社内規程・マニュアル、を整備します。
形式的に規程を揃えるだけではなく、実際の事業モデルと整合する内容にすることが重要です。
金融商品取引業の登録手続では、いきなり登録申請書を提出するのではなく、通常、管轄財務局との事前相談を進めます。
事前相談では、事業スキーム、取扱商品、顧客属性、収益構造、役員・使用人の経歴、組織体制、コンプライアンス態勢、社内規程などについて確認が行われます。
そのため、事前相談を開始する前に、「何のライセンスを取りたいか」だけではなく、「誰に、どのような金融商品を、どのような方法で提供し、誰がどの業務を担当するのか」まで具体化しておくことが重要です。
特に海外投資家向けビジネスでは、投資家属性の確認方法、英語資料の管理、クロスボーダー取引、AML/CFT対応まで含めた説明が必要になる場合があります。
出資構成と募集・運用の分担を整理した後の支援範囲は、ファンド組成支援と海外投資家等特例業務の届出支援をご覧ください。
海外の機関投資家やファミリーオフィスから出資を受けたい場合。
日本国内で海外投資家向けのファンドを組成したい場合。
GK-TK、LPSその他のファンドスキームを検討している場合。
適格機関投資家等特例業務を利用できるか確認したい場合。
海外投資家等特例業務を利用できるか確認したい場合。
現在63条特例で事業を行っており、第二種金融商品取引業への移行を検討している場合。
第二種金融商品取引業と投資運用業のどちらが必要なのか分からない場合。
海外の資産運用会社が日本へ進出する場合。
不動産、再生可能エネルギー、PE・VC、スタートアップその他のオルタナティブファンドを組成したい場合。
このようなケースでは、法人設立や契約書作成を先行させる前に、金融商品取引法上の整理を行うことをお勧めします。
Q.海外投資家だけを対象にすれば、第二種金融商品取引業の登録は不要ですか。
必ずしも不要にはなりません。
海外投資家を対象とする場合でも、日本国内で行う募集・私募等が金融商品取引業に該当する可能性があります。
ただし、投資家属性、非居住者からの出資割合その他一定の要件を満たす場合には、海外投資家等特例業務などを利用できる可能性があります。
Q.適格機関投資家が1社参加すれば、その他49人まで誰でも出資できますか。
そのような制度ではありません。
適格機関投資家以外の出資者についても、法令上認められた一定の範囲に該当する必要があります。
投資家の属性確認を行わずに人数だけで判断することは避ける必要があります。
Q.第二種金融商品取引業を取得すれば、ファンドの運用もできますか。
投資対象と運用方法によります。
出資財産について投資判断に基づいて主として有価証券やデリバティブへ投資する場合には、別途投資運用業の登録等が問題となります。
第二種金融商品取引業と投資運用業は役割が異なります。
Q.海外のファミリーオフィスから出資を受ける場合もKYCは必要ですか。
投資家の名称や知名度だけで判断することはできません。
法人の実質的支配者、所有構造、資金源、所在国、制裁対象者との関係など、リスクに応じた確認が必要となります。
Q.ファンドを設立してから金融規制を確認してもよいですか。
可能であれば、設立前の確認をお勧めします。
投資家属性や投資対象によって最適なファンド形態や必要な許認可が変わるためです。
許認可を後から検討すると、契約構造、投資家構成、運用体制そのものを変更しなければならなくなる場合があります。
投資家の属性と予定する事業内容を添えて、ご相談ください。
編集・発信:行政書士 緒方法務事務所
運営責任者:特定行政書士 緒方 隆朗(資格・経歴・事務所概要)
ページ更新日:2026年10月16日