不動産クラファン事業、選ぶべきは『不特法』か『信託』か?運用型信託免許のメリット・デメリットを徹底比較
不動産クラファン事業、選ぶべきは『不特法』か『信託』か?運用型信託免許のメリット・デメリットを徹底比較
不動産クラファン事業、選ぶべきは『不特法』か『信託』か?運用型信託免許のメリット・デメリットを徹底比較
記事概要
昨今、不動産クラウドファンディング市場の拡大に伴い、多くの不動産事業者様やFintech企業様から「不動産の小口化事業を始めたい」というご相談をいただきます。
その際、最初にして最大の分岐点となるのが、「不特法(不動産特定共同事業法)」でいくか、それとも「信託スキーム(信託業法)」を活用するか、という選択です。
特に、より自由度の高い商品設計を求めて「運用型信託免許」に関心を持たれる経営者様も増えていますが、この二つは似て非なる制度です。
今回は、金融専門の行政書士の視点から、不動産小口化における「不特法」と「信託」の違い、そして運用型信託の現実的な活用可能性について解説します。
1. 不動産小口化の王道「不特法」とは?
現在、多くの不動産クラウドファンディング事業者が取得しているのが「不動産特定共同事業法(不特法)」の許可です。
特徴: 事業者自身が契約の当事者となり、投資家から資金を集め、現物不動産を運用・取引します。
メリット: 不動産業の延長線上で事業組み立てがしやすく、自社保有物件の資金調達にも活用しやすい点です。
デメリット: 原則として投資家の資産と事業者の資産が完全に倒産隔離(分別)されているわけではないため、事業者の信用リスクが商品に影響します。
2. 「信託」を活用したスキームとは?
一方、信託法および信託業法に基づくスキームでは、資産の所有権を形式的に受託者(信託会社等)に移転させます。これにより「倒産隔離機能」が働き、投資家保護のレベルが格段に上がります。
信託会社には大きく分けて以下の2種類があります。
① 管理型信託会社(登録制)
信託財産の「保存」や「利用」のみを行う、あるいは委託者の指図通りに管理のみを行う会社です。
ハードル: 資本金5,000万円以上。登録制のため、比較的参入しやすいです。
限界: 自らの判断で資産を運用(売買などして増やす行為)をすることができません。
委託者の指図なく、信託会社の判断で資産を運用・処分することができる会社です。
ハードル: 資本金1億円以上。内閣総理大臣の「免許」が必要。
自由度: 非常に高い。金銭を集めて不動産以外(株式や債券など)へ投資するなど、ファンドマネージャー的な役割を果たせます。
3. 「運用型信託免許」の壁と現実
「自由度が高いなら、運用型信託免許を取りたい」と思われるかもしれません。
しかし、実務上、運用型信託の免許取得は極めてハードルが高いのが現実です。
単に資本金があれば良いわけではなく、銀行と同等の厳格なコンプライアンス体制、金融知識豊富な人的構成、強固なシステムが求められます。審査期間も年単位になることが珍しくありません。
そのため、一般的な不動産事業者がいきなり運用型信託を目指すのは、コストと時間の面で現実的ではないケースが多いのです。
4. それでも「信託」が注目される理由
では、なぜ今「信託」の検索が増えているのでしょうか。それは「セキュリティ・トークン(STO)」や「受益証券発行信託」といった、新しい金融商品の台頭です。
不特法では対応しきれない、大規模な開発案件や、不動産以外の資産(太陽光、アート、ウイスキー等)も含めたポートフォリオを組みたい場合、信託スキームは強力な武器になります。
5. 結論:自社に最適なライセンスは?
これから参入を検討される場合、以下の基準で考えるとスムーズです。
現物不動産の運用がメインの場合
まずは「不特法(1号・2号)」の取得、または小規模不動産特定共同事業からのスモールスタートを推奨します。
信託受益権化して販売したい場合
自社で信託免許を取るのではなく、既存の信託銀行等に信託し、自社は「第二種金融商品取引業(金商法)」の登録を受けて販売・媒介を行う形が一般的です。
独自の金融プラットフォームを作りたい場合
ここで初めて、自社での信託会社設立(管理型、あるいは将来的な運用型)の検討に入ります。
まとめ
「運用型信託」は資産運用の究極形の一つですが、事業のゴールによっては、より取得しやすく、ビジネススピードを損なわない別のライセンス(不特法や第二種金商)の方が適している場合が多々あります。
当事務所は、金融専門の行政書士事務所として、「やりたいビジネスを実現するには、どの法律のどのパズルのピースが必要か」という設計図からご提案いたします。
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