BNPL(後払い)事業の始め方|
「個別信用購入あっせん業」の登録要件と参入障壁
BNPL(後払い)事業の始め方|
「個別信用購入あっせん業」の登録要件と参入障壁
【解説】BNPL(後払い)事業の始め方
|「個別信用購入あっせん業」の登録要件と参入障壁(純資産・CIC加盟)
ECサイトでの「カゴ落ち(決済直前の離脱)」を防ぐ切り札として、世界的に市場が拡大しているBNPL(Buy Now, Pay Later=後払い決済)。
Paidy(ペイディ)やNP後払いなどの成功事例を見て、「自社サービスにも後払い機能を実装したい」「独自の分割払いアプリを開発したい」と考える事業者が急増しています。
しかし、このBNPL事業は、システムさえ開発すれば誰でも始められるものではありません。
商品代金を立て替え、ユーザーから後で回収するビジネスモデルは、日本の法律ではクレジットカード会社と同じ「割賦販売法」の厳しい規制対象となります。
具体的には、「個別信用購入あっせん業」という経済産業大臣の登録が必要になるケースが大半です。
「知らなかった」では済みません。無登録でこの事業を行うことは、重い刑事罰の対象となります。
そして、いざ登録しようとすると、スタートアップにとって絶望的とも言える「純資産5,000万円以上」という高いハードルや、指定信用情報機関(CIC等)への加盟義務が立ちはだかります。
「では、資金力のないベンチャー企業はBNPLに参入できないのか?」
答えは「No」です。法の仕組みを正しく理解すれば、登録が不要な「適用除外(マンスリークリア等)」のスキームでスモールスタートし、将来的に本格的な登録を目指すというロードマップを描くことが可能です。
本記事では、フィンテック法務に強い行政書士であり、元CFOとして資金調達の実務も熟知する筆者が、複雑なBNPLの法的区分と、登録の壁を突破するための参入戦略について、実務的な視点で解説します。
そもそも「個別信用購入あっせん業」とは?(BNPLの法的定義)
「個別信用購入あっせん」という耳慣れない法律用語ですが、古くからある言葉で言えば「ショッピングクレジット」や「個品割賦(こひんかっぷ)」のことです。
家電量販店で高額なパソコンを買う際、クレジットカードを使わずに「ローン申込み用紙」を書いて分割払いにする、あの仕組みがまさにこれに当たります。
近年のBNPL(Buy Now, Pay Later)は、この仕組みをアプリ上で瞬時に完結させることでDX化したものと言えます。
1. ビジネスモデルの構造(3者間契約)
このビジネスは、以下の3つのプレイヤーによる「3者間契約」で成り立っています。
利用者(購入者): 加盟店で商品を購入し、代金を後払いで支払う人。
加盟店(販売店): 商品を販売するECサイトや実店舗。
あっせん業者(BNPL事業者): 利用者の代わりに代金を加盟店へ立替え、後で利用者から回収する業者。
法律上のポイントは、「あっせん業者が、利用者の債務(代金)を立替払いすること」です。単なる収納代行ではなく、一時的にクレジット(信用)を供与しているため、金融規制の対象となります。
2. 「包括(クレジットカード)」との違い
割賦販売法には、似て非なる2つのライセンスがあります。
包括信用購入あっせん(クレジットカード):
利用者に「枠(与信枠)」を与え、その範囲内なら審査なしで何度でも買い物ができる仕組み。カード会社としての登録が必要です。
個別信用購入あっせん(BNPL・ショッピングローン):
カードのような「枠」を持たず、「この商品を買うために、この金額を後払いにしたい」という申込みを、取引のたびに行い、その都度審査をする仕組み。
多くのBNPLサービスは、アプリ上で「利用可能額」が表示されていても、法的には「取引ごとの審査」という建付にすることで、クレジットカード業(包括)ではなく、この「個別信用購入あっせん業」として登録を行っています。
3. 規制の対象となる「境界線」
ここで重要なのが、「すべての後払いが規制対象ではない」という点です。
割賦販売法における「個別信用購入あっせん」と定義されるためには、以下の条件(政令指定要件)を満たす必要があります。
2ヶ月を超える期間にわたる支払いであること
3回以上の分割払い(またはリボルビング払い)であること
※ただし、実務上は「2回払い」でも対象となるケースがあるため注意が必要です。
つまり、逆に言えば「2ヶ月以内の支払い」であれば、どれだけ高額な後払いサービスを提供しても、この厳しい登録は不要ということになります。
この「法の隙間(例外規定)」こそが、多くのBNPLスタートアップが最初に目指すべき参入ルートとなります。
参入の最大の壁「登録要件」の3大ハードル
個別信用購入あっせん業は、経済産業局への「登録」が必要です。
単に書類を出せば終わる「届出」とは異なり、国が「この会社は金融サービスを提供しても大丈夫か?」を厳格に審査します。
スタートアップにとって、特に高い壁となるのが以下の3点です。
1. 財産的基礎:「純資産5,000万円」の壁
法律上、登録を受けるには「財産的基礎を有すること」が求められます。
具体的な基準は、直近の決算書(または開始貸借対照表)において、「純資産額が5,000万円以上」あることです。
CFO視点の注意点:
「資本金」ではありません。「純資産」です。
スタートアップは、創業初期に赤字(Jカーブ)を掘ることが一般的ですが、もし赤字が累積して純資産が5,000万円を割っている(または債務超過の)場合、どれだけ有望な技術があっても登録は拒否されます。
参入するためには、この基準を満たすための大型の増資(エクイティ調達)が必須条件となります。
2. 過剰与信防止義務:「指定信用情報機関(CIC等)」への加盟
割賦販売法は、消費者が借金を抱えすぎることを防ぐため、あっせん業者に対し「支払い能力の調査」を義務付けています。
そのためには、国が指定する信用情報機関(CICやJICC)に加盟し、「他社での借入状況」を参照できるシステムを構築しなければなりません。
コストと技術の壁:
CIC等への加盟には、厳格な審査と数百万円単位の加盟金・システム接続料がかかります。
また、俗にいう「スクレイピング」のような簡易的な接続は認められず、専用線や高度なセキュリティ要件を満たした接続が求められます。
3. 人的構成とセキュリティ:PCI DSS等の準拠
「社長とエンジニアの2人だけで運営する」といった体制では登録できません。
適正に業務を行うための「社内規則」と、それを運用できる「組織体制」が必要です。
体制図の提出:
審査部門、加盟店管理部門、苦情処理担当などを明確にし、コンプライアンス責任者(法令遵守の管理者)を配置する必要があります。
セキュリティ(PCI DSS):
クレジットカード番号を取り扱う、あるいはそれに準ずる決済情報を扱う場合、国際セキュリティ基準である「PCI DSS」への準拠や、カード情報の非保持化措置が求められます。
【現実解】スタートアップはどうすべきか?
「純資産5,000万円もなく、CICに加盟する体力もない。それならBNPLは諦めるべきか?」
そうではありません。
実は、これらの厳しい規制を合法的に回避し、登録なしでBNPL事業を立ち上げるための「例外規定」が存在します。多くの後払いアプリは、まずこの領域からスモールスタートしています。
登録を回避できる?「2ヶ月以内・2回払いまで」の例外規定
前の章で解説した「純資産5,000万円」「CIC加盟」というハードルを聞いて、参入を諦めかけた方もいるかもしれません。
しかし、国内で展開されている多くの後払いアプリ(特にサービス初期段階のもの)は、実は「個別信用購入あっせん業」の登録を行わずに運営されています。
なぜそれが可能なのか。それは、割賦販売法が定める「規制の対象外」となる領域でビジネスモデルを設計しているからです。
1. 魔法の数字「2ヶ月・2回」
割賦販売法では、すべての後払いが規制されるわけではありません。政令により、以下の条件を満たす取引は「法の適用除外」とされています。
支払い期間が「2ヶ月以内」であること
支払い回数が「2回以内」であること
つまり、この範囲内に収まるサービスであれば、それは法律上の「割賦販売(クレジット)」には該当せず、登録なし・純資産要件なしで事業を開始することが可能です。
2. 「マンスリークリア(翌月一括払い)」の正体
この例外規定を最大限に活用したのが、いわゆる「マンスリークリア」と呼ばれるモデルです。
仕組み: 1月1日〜1月31日の買い物代金を、翌月の2月10日(または25日など)に「一括」で支払う。
法的判定: 購入日から支払日までが最大でも2ヶ月以内に収まり、かつ1回払いであるため、登録不要となります。
多くのBNPL事業者が、まずはこの「マンスリークリア」からサービスをリリースし、ユーザー数と資金を蓄えてから、将来的に登録を行って「3回以上の分割払い」機能を実装するという成長ステップを踏んでいます。
3. 登録あり(規制対象)vs 登録なし(適用除外)の比較
スモールスタートを目指す場合は、「登録あり(個別信用購入あっせん)」と「登録なし(マンスリークリア等)」の制度的な違いを正しく理解した上で、事業戦略を設計することが不可欠です。
まず、登録あり(個別信用購入あっせん)は、3回以上の分割払いやリボ払いが可能で、支払い期間も2か月を超える長期ローンに対応できます。そのため、高額な家電・家具・美容医療など、単価の高い商材を扱える点が大きな特徴です。一方で、登録が必須となり審査は厳格です。純資産5,000万円以上という財務要件が課され、CICへの加盟も義務付けられるため、初期ハードルは高く、十分な資本力と管理体制が前提となります。
これに対して、登録なし(マンスリークリア等)の方式は、登録が不要で、純資産要件も特にありません。支払いは基本的に一括、もしくは2回までの分割に限定され、回収期間も2か月以内に完結させる必要があります。そのため、アパレル、雑貨、飲食などの少額決済に向いており、CIC加盟も任意(実務上は加盟できないケースが多い)です。制度的な自由度が高く、初期投資を抑えながら事業を立ち上げやすい点が特徴です。
このように、スモールスタートを重視する場合は、まず登録不要型で小額・短期回収モデルを構築し、事業実績と資本を積み上げた後に、登録ありモデルへ段階的に移行するといった戦略が現実的です。両者の違いは単なる決済方法の差ではなく、資本要件・リスク管理・扱える商材の幅に直結するため、事業フェーズに応じた使い分けが重要になります。
4. 【要注意】「リボ払い」っぽく見せるのは危険
「登録はしたくないけど、分割払いはさせたい」として、無理なスキームを組むのは危険です。
例えば、「建前は一括払いだが、アプリ上で自由に支払い月を先延ばしできる(実質リボ払い)」ような機能を提供した場合、実態判断として割賦販売法違反(無登録営業)とみなされるリスクがあります。
法の潜脱(せんだつ)行為と判断されれば、サービス停止命令だけでなく、刑事罰の対象となります。
セキュリティの砦「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」とは?
BNPL事業を構築する際、「個別信用購入あっせん業」の登録と同じくらい、あるいはそれ以上にシステム的な難所となるのが「セキュリティ対策」です。
特に、サービスの裏側でクレジットカード決済機能を持たせる場合(例:BNPLの利用代金をカードで支払う場合や、貴社が決済代行会社のような立ち位置になる場合)、割賦販売法における「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」としての登録や義務が発生するケースがあります。
1. 噛み砕いて言うと「決済代行会社(PSP)」の役割
「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」とは、非常に長い名称ですが、平たく言えば「加盟店と契約し、クレジットカード番号を取り扱う権限を持つ業者(アクワイアラや決済代行会社)」のことです。
この登録を行うと、法的に以下の3つの重い義務(セキュリティの3本柱)が課されます。
クレジットカード番号等の適切な管理(漏洩防止)
不正利用の防止(なりすまし対策)
加盟店の調査(悪質店の排除)
2. 「PCI DSS準拠」か「非保持化」か
BNPL事業者がカード情報を扱う場合、システム設計において究極の二択を迫られます。
選択肢A:カード情報の非保持化(推奨)
自社のサーバーをカード情報が「通過」も「保存」もしない仕組み(トークン決済やリンク型決済)を採用すること。
多くのスタートアップは、開発コストを抑えるためにこちらを選びます。
選択肢B:PCI DSSへの準拠
自社でカード情報を保存・処理する場合、国際的なセキュリティ基準である「PCI DSS」に完全準拠する必要があります。
これには数千万円〜億円規模の投資と、毎年の厳しい審査が必要であり、生半可な覚悟では維持できません。
3. 加盟店管理という「泥臭い」義務
BNPL事業者が「個別信用購入あっせん業」として登録する場合でも、あるいは「取扱契約締結事業者」となる場合でも、共通して求められるのが「加盟店管理(アクワイアリング)」の能力です。
「あなたのサービスを導入するECサイトは、本当に実在していますか?」
「違法な商品を売っていませんか?」
これらを契約時に審査し、契約後も定期的にモニタリングする体制(途上与信)が法律で義務付けられています。システムだけでなく、こうした「人による審査・管理体制」が構築できていないと、登録は認められません。
4. 【当事務所の強み】私は「登録事業者」の代表です
行政書士として許認可を代行する先生は多いですが、「自らがクレジットカード番号等取扱契約締結事業者として登録を受け、実務を行っている行政書士」は、日本中を探してもほぼ私だけでしょう。
私は現在、経済産業省に登録された事業者の代表取締役として、実際にPCI DSS準拠の厳しさや、加盟店審査の実務を日々運用しています。
だからこそ、机上の空論ではない、「システムベンダーとどう交渉すべきか」「審査でどこを突っ込まれるか」という現場レベルの助言が可能です。
当事務所の支援内容(許認可からビジネスモデル構築まで)
BNPL事業の立ち上げは、単なるアプリ開発プロジェクトではありません。「金融庁・経済産業省の規制」と「高度なセキュリティ要件」を同時にクリアしなければならない、難易度の高い金融プロジェクトです。
当事務所では、元CFOとしての財務視点と、現役の決済事業者としての実務経験を活かし、構想段階からサービスインまでを伴走支援します。
1. ビジネスモデルの適法性診断(リーガルチェック)
「この仕組みなら登録不要でいけるはずだ」
そう思い込んで開発を進め、リリース直前に「違法(無登録営業)」と判明してプロジェクトが頓挫するケースがあります。
スキーム判定: 御社の想定するモデルが「個別信用購入あっせん業」に該当するか、それとも「マンスリークリア(適用除外)」や「収納代行」で整理できるかを診断します。
利用規約の作成: 割賦販売法や消費者契約法に準拠した、堅牢な利用規約・加盟店規約を作成します。
2. 経済産業局への登録申請・折衝
個別信用購入あっせん業の登録申請は、膨大な書類作成に加え、管轄の経済産業局との綿密な事前相談(折衝)が必要です。
申請書類の作成: 登録申請書、業務方法書、社内規則などの作成を代行します。
審査対応: 審査官からの細かな指摘事項(Q&A)に対し、法的根拠に基づいた回答書を作成し、スムーズな登録完了を目指します。
3. 「純資産5,000万円」をクリアする財務戦略(CFOサービス)
スタートアップにとって最大の壁である「純資産要件」。
これを満たすためには、資本政策(増資)やバランスシートの改善が不可欠です。
資金調達支援: 元CFOとして、VCや投資家に対するエクイティ調達のアドバイスを行います。
財務諸表の改善提案: 登録審査を通過するために、決算書(貸借対照表)をどう整えるべきか、財務戦略の観点から助言します。
4. CIC加盟・セキュリティ体制の構築支援
「登録証」をもらっても、CIC(指定信用情報機関)とシステムがつながらなければ開業できません。
CIC加盟サポート: 入会審査の支援から、システムベンダーの選定、接続テストの立ち会いまで、実務ベースで助言します。
PCI DSS対応のアドバイス: 私自身が「クレジットカード番号等取扱契約締結事業者」として実務を行っている知見から、過剰投資にならず、かつ安全なセキュリティ体制の構築を支援します。
御社の「後払いアプリ」、そのままリリースして大丈夫ですか?
割賦販売法の規制対象か、まずは無料で診断します。
BNPL(後払い決済)は、ECサイトの売上を伸ばす魅力的な機能です。しかし、その仕組みが一歩でも「個別信用購入あっせん業」の領域に踏み込んでいれば、無登録営業として刑事罰(5年以下の懲役等)の対象となり、サービスは即停止、会社は信用を失います。
「マンスリークリアだから大丈夫だと思っていた」
「2回払いなら登録不要だと聞いていた」
こうした誤解が命取りになります。システム開発に巨額の投資をする前に、まずは「その設計で法的に問題ないか」を確認することが、スタートアップにとって最初のリスク管理です。
金融法務に精通した行政書士であり、自らも決済事業者として登録を持つ当事務所が、御社のBNPL事業を「適法かつ持続可能なビジネス」へと導きます。
このようなお悩みは、今すぐご相談ください
自社で後払い(BNPL)システムを開発中だが、法規制のクリア方法がわからない
「純資産5,000万円」の要件を満たせず、登録すべきか迂回すべきか迷っている
CICへの加盟や、PCI DSS準拠にかかるコスト感を知りたい
資金調達(エクイティ)を含めた、CFO視点での事業計画策定を頼みたい