宅建業者のマネロン対策
リスク評価書・社内規程
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リスク評価書・社内規程
2026年10月18日の共同通信報道では、不審点のある海外法人や暗号資産を用いた不動産取引などについて、疑わしい取引のチェックリストを見直す動きが紹介されました。国土交通省も、同年9月3日付の事務連絡で参考事例の改定案を示し、10月を目途に通知・施行する予定としています。
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宅地・建物の売買や仲介を行う不動産会社向けに、マネロン対策で整備すべきリスク評価書、社内規程、取引時確認、疑わしい取引の届出手順を解説します。海外法人や暗号資産を伴う取引も含め、営業現場で使える書類と判断・報告の仕組みを整えることが重要です。
公開・情報確認日:2026年10月18日
2026年10月18日の共同通信報道では、不審点のある海外法人や暗号資産を用いた不動産取引などについて、疑わしい取引のチェックリストを見直す動きが紹介されました。国土交通省も、同年9月3日付の事務連絡で参考事例の改定案を示し、10月を目途に通知・施行する予定としています。本稿では、改定案・報道内容と、既に適用されている義務や公表済みの行政上の要請を区別して整理します。
既に国土交通省は、チェックリストに該当する場合や判断に迷う場合の届出を促すとともに、未作成の宅建業者に対して2026年度中のリスク評価書の作成完了を要請しています。改定後のチェックリストを待つ間にも、現在の社内規程、顧客確認の方法、疑わしい取引の社内報告経路を点検できます。
2026年度中の作成完了は、公表されている行政上の要請・目標として捉える必要があります。今回の報道によって、新たな許可申請や一律の年次報告が始まったという意味ではありません。2027年4月の本人確認方法の変更に向けた準備も、併せて検討する課題です。
犯罪収益移転防止法上、宅建業者が行う宅地・建物の売買契約の締結又はその代理・媒介が、取引時確認等の対象です。自社の業務が売買・売買仲介なのか、賃貸借の媒介・管理なのかを分け、適用範囲を確認することから始めます。外国人顧客や高額物件を扱う会社だけの制度ではありません。
取引時確認では、個人顧客の本人特定事項・取引目的・職業、法人顧客の名称・所在地・取引目的・事業内容・実質的支配者などを、法令に従って確認します。取引担当者や代理人の本人確認と権限確認も、顧客本人の確認と分けて整理します。
確認記録と取引記録の作成・保存、疑わしい取引の届出も重要な義務です。確認記録・取引記録には法定の起算点から7年間の保存が必要となるため、作成日だけで一律に廃棄日を決めず、保存期間と検索方法を定めます。本人確認書類の写しを保管するだけでは、取引時確認の内容や取引経過を十分に説明できない場合があります。
こうした義務を実行する体制として、リスク評価、規程の作成、統括管理者の選任、従業員の教育訓練などを整えます。法令上の義務、努力義務、ガイドラインで求められる取組を区別し、自社の規模と取引内容に応じて具体化します。
海外法人の場合は、設立・存続を確認する資料、事業の実体、所有・支配関係、実質的支配者、取引担当者の権限を整理します。法人が多層になっている場合には、確認対象となる自然人までの関係を追える資料を準備することが実務上の課題になります。
物件を購入する目的、資金の出所、契約者と実際の支払人との関係、関係する国・地域などを、リスクに応じて確認します。外国法人であるという属性だけで犯罪と判断せず、説明や資料の不整合、不自然な支払方法などを具体的に記録します。FATFが公表する国・地域の情報と経済制裁の対象者リストは目的が異なるため、それぞれ最新情報を確認する運用が必要です。
国土交通省等は2026年4月28日付の要請で、暗号資産を用いた不動産取引について、厳格な取引時確認と適切な疑わしい取引の届出等を求めています。暗号資産の取扱いを今回の改定案で初めて意識すればよいわけではありません。
実務では、誰が暗号資産を保有・送付するのか、誰が受領・換金するのか、登録された交換業者を利用するのか、売買契約上の支払者と実際の送金者が一致しているかなどを整理します。暗号資産の交換や交換の媒介等を業として行う場合には、宅建業免許とは別に資金決済法上の登録の検討が必要となり得ます。外為法上の報告等も、取引の内容に応じて別途確認します。
国土交通省は2026年2月に、宅建業者向けのリスク評価書作成要領、様式、記載例、リスク評価総括表を公表しています。記載例を出発点に、自社が扱う物件、取引金額、顧客層、営業地域、決済方法などを反映させます。
例えば、居住用住宅の仲介を中心とする会社と、海外法人に高額な投資用物件を販売する会社では、確認すべきリスクや追加資料の範囲が異なります。過去の届出件数がゼロであっても、どのような取引を確認し、どのような理由でリスクを評価したかを整理することが大切です。
作成要領では、年1回の定期的な見直しと、重要な変化があった場合の必要に応じた見直しが示されています。新しい国・地域の顧客との取引、暗号資産決済の導入、営業地域の拡大などがあれば、評価と現場の確認手順を併せて更新する運用にします。
国土交通省は2026年2月19日付の事務連絡で、チェックリストに一つでも該当する場合、又は該当するか明確でなく判断に迷う場合に届出を行う考え方を示しています。一方、公表資料には合理的な理由がある場合の取扱いも示されています。疑わしくないと判断できる明確な根拠がある場合は、その事実・資料・判断理由を残し、疑いが解消しない案件を営業担当者だけの判断で終了させないことが重要です。
同年9月3日付の事務連絡では、疑わしい取引と判断した場合、契約が成立しなかった案件でも届出を行うことが明確にされています。また、届出をしたこと自体によって契約締結が否定されるものではありません。ただし、届出さえすれば、本人確認の未了や経済制裁など他の問題まで解消するわけではありません。
社内では、担当者による気付きの記録、統括管理者への報告、追加確認、判断、所管行政庁への届出、記録保管までの担当と手順を定めます。社内の承認待ちで必要な届出が遅れないよう、責任者が不在の場合の代行者も決めておくと運用しやすくなります。
犯収法第8条第4項により、届出を行おうとすることや行ったことを、対象となる顧客やその関係者に知らせてはいけません。届出情報の閲覧権限、顧客への照会文面、社内共有の範囲も規程・研修で扱う必要があります。
当事務所では、既存資料と業務フローを確認し、必要なものを選んで整備する方法をご提案します。主な成果物は次のとおりです。
・リスク評価書・総括表:顧客層、取引形態、国・地域ごとのリスクと、その低減措置を整理します。
・マネロン対策規程・取引時確認マニュアル:責任者、確認事項、追加確認、判断・承認、記録保存の手順を定めます。
・顧客確認・法人確認の様式:実質的支配者、取引担当者の権限、外国法人の確認資料などを記録する項目を整えます。
・疑わしい取引の社内報告・判断記録:確認した事実、未解決事項、判断者、判断理由、届出への対応を記録できるようにします。
・研修資料・点検表・更新管理表:担当者への説明、運用状況の確認、改定履歴や定期見直しの管理に用います。
進め方は、①現在の取引と資料の確認、②不足項目の整理と対応範囲の決定、③規程・様式の作成、④実際の案件を想定した運用確認、⑤担当者への周知・見直し、の順を基本とします。金融機関向けの規程をそのまま流用せず、宅建業者に適用される制度と実際の人員体制に合わせて作成します。
行政書士 緒方法務事務所では、金融許認可・内部管理体制の整備で扱う顧客確認、規程・マニュアル、書類間の整合性確認の実務を踏まえ、宅建業者向けのマネロン対策整備を支援します。既存規程の点検、リスク評価書だけの作成、特定様式の見直し、助言など、必要な範囲でご依頼いただけます。
ご相談時は、売買・仲介等の業務内容、店舗・担当者の体制、海外法人や暗号資産を伴う取引の有無、既存の規程・リスク評価書の有無、希望する整備時期をお知らせください。初回のお問い合わせでは、顧客の本人確認書類や具体的な疑わしい取引の情報を添付せず、まず整備したい業務の概要をお伝えください。個別資料の確認が必要な場合は、受領方法をご案内します。
報酬は、作成・確認する書類、店舗数、取引の複雑さ、研修・継続見直しの範囲に応じて個別にお見積りします。専門相談・助言は1時間110,000円(税込)・完全予約制です。特定書類の作成は1通55,000円(税込)から(10頁以内の最低報酬の目安)とし、調査・整合性確認・修正等の範囲を踏まえてご案内します。これらの部分支援の金額を、体制整備一式の報酬として表示するものではありません。
受任可否・お見積りのための初回メールでのお問い合わせは無料です。具体的な法令判断や資料確認を伴う専門相談・作業は、内容と費用を事前にご案内します。届出の判断・履行や日常の顧客管理は事業者自身の責任の下で行い、当事務所は依頼範囲に応じた書類・手順の整備を支援します。
犯罪による収益の移転防止に関する法律(第4条・第6条・第7条・第8条・第11条)及び関係政省令
国土交通省「不動産業におけるマネー・ローンダリング対策(犯罪収益移転防止法)」/「犯罪収益移転防止法の概要について」(2026年4月)
国土交通省「リスク評価書の作成及び『疑わしい取引の届出』における判断基準の明確化について」(2026年2月19日)及びリスク評価書作成要領
国土交通省「宅地建物取引業におけるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与・拡散金融対策に関するガイドライン」(2026年4月28日)
国土交通省・金融庁・警察庁・財務省「暗号資産を用いた不動産取引について(要請)」(2026年4月28日)
国土交通省「『疑わしい取引の届出』における判断基準の明確化」の解釈について(2026年9月3日。参考事例の改定案を含む)
報道参照:共同通信「不動産取引のマネロン点検強化へ 海外法人や暗号資産」(2026年10月18日配信)。
編集・発信:行政書士 緒方法務事務所
運営責任者:特定行政書士 緒方 隆朗(資格・経歴・事務所概要)
ページ更新日:2026年10月18日